思い出てろてろ 高校生編

推薦入学でものすごい楽をして高校に入った僕は、「そろそろ傷も癒えたか」という心境で再びサッカーを始めようとしますが、サッカー部員に坊主を強要するという謎の校風のために断念しました。いや何を色気づいてんだと言われれば何も返す言葉がないですが、僕めちゃくちゃ坊主が似合わないんですね。僕は一番似てるのがゼニガタアザラシなので、前髪がないと絶対ダメなんです。ゼニガタアザラシはあの色黒の感じに模様が入ってるからツルツル頭でもいいけど、もしゼニガタアザラシが無地の肌色だったら、あの前足をちょっと浮かせたおどけたポーズをしてもまるで集客できないでしょう。

でなんかバスケも全然勝てなかったしバスケ部もなあっていうのがあって、仲間内で遊びでサッカーをやりながらあとはまっすぐ家に帰るリアルな凡庸さを放っていました。何が凡庸かって帰り道によくメロンパンの移動販売車が来てて買い食いしてたんですけど、そこに女子が介在した記憶が全くない。男3、4人でただひたすら焼きたてのメロンパンを貪り歩くその姿は、スケールを100分の1にした新撰組みたいな、香取慎吾演じる近藤勇の違和感など吹き飛ぶような、ただの小動物の群れでした。この時点で無職の将来を暗示するかのような不穏な空気が漂っていました。

あと高校時代に初めて本気で好きになる人が現れます。それまでにも気になる人はいましたが、大抵は「一緒にF-ZEROができればいいな」程度の好きでした。そのお相手はIさんというんですが、Iさんはクラスのマドンナ的存在で誰もが憧れるような高嶺の花でした。しかし内気な僕は遠くからIさんを眺めているだけで、「このまま順調にIさんの後見人(非公式)になるんだろうな」と思っていました。ある朝奇跡的にIさんに「おはよう」と言われたんですけど、僕は根暗がヒートバーンしてたので無視してしまったら、次の日もあいさつしてくれて、気が動転して「あらおはよう」とピアノの先生みたいな感じで返答してしまったこともありました。ところが運が味方し、二学期の席替えで僕はIさんの隣の席を確保します。僕は幼少期からシャイをこじらせていたので、自分から積極的に他人に干渉できないんですが、このチャンスを逃すわけにはいかなかったので、努めて気丈に彼女に話しかけました。サッカーの話、バスケの話、当時露出が多かった角田信朗の話、角田信朗が後輩に嫌われてる話、実際角田信朗のレフェリングどうなのの話など精力的にアプローチしました。そしてある日勇気を出して彼女にメールアドレスを聞いてみました。しかし彼女の返答は「ごめん、私彼氏がいるから。あまり男の子に連絡先教えないんだ」というものでした。当時の気持ちを表現するのは非常に難しいんですが、もしその時の僕が三匹のイルカと遊泳していたとしたら

      イルカ1
       /\
  励まし↑/   \ ↓察し
     / 僕   \
    /_______

 イルカ3  ←    イルカ2
       癒し

という感じです。このシリーズでここまでほとんどいい思いをしてない気がしますが、ここから更に社会からドロップアウトしていくので今思えばこの時は幸せだったよね。