姉と僕

3つ年の離れた姉がいる。彼女はとても冷静なので、日頃くだらないことを言う僕とよくすれ違いが起きる。

僕たちが幼い頃から姉は大人びていて、当時二人で初代ポケットモンスター幻のポケモン、ミュウをもらいに幕張メッセに行ったのだけど、会場が広くて迷ってしまい、このままではミュウが手に入らなくなってしまうんじゃないかと泣き出した僕に、「5時まではもらえるはずだから大丈夫。所詮はデータだから絶対になくならないよ」とミュウの正体を明かしながら励ましてくれた。

ご飯パサパサ事件という忘れられない出来事がある。ある日母が風邪で寝込んでしまい、僕たち姉弟で夕飯を準備しなければいけなくなった。普段全く料理をしない僕が比較的簡単な炊飯を担当することになり、姉がおかずを作ることになった。僕は米を研いで炊飯スイッチを押すだけなのだけど、炊飯器に水を入れるのを忘れてしまい、水気のないパサパサなご飯ができてしまった。家族に申し訳なかったし、お米には神様が宿ってると聞いたことがあったので、その神様を怒らせてしまったのではないかと言うと、「もし本当に神様がいるなら、私たちのためにふっくら炊けてくれてた。だから神様はいない」と断言された。僕の中の神はこの時に死んだ。

思春期くらいから僕がお笑いに興味を持ち始めたので、別に仲は悪くないのだけど笑いに関する温度差が出始めた。中学生の頃よく借りていたバカ殿のビデオをリビングで見ていたら、隣に座っていた姉が「志村けんもそろそろちゃんとしないとね」と呟いた。志村けんには悪いのだけど、姉は快活な笑いが特に嫌いらしく、あの手を震わせながら接客をする志村けんのコントに「水がもったいない」という感想しか残してなかった。

この間姉の部屋に入った時に、姉の集めてるアルパカのぬいぐるみが一体増えてたので、「どこのヤンキーに取ってもらったの?」と聞いたら「大丈夫です」と一心に会話を終わらせようとする答えが返ってきた。

姉は冷たい訳ではないのだけど、R-1グランプリで女装までする僕とは不一致がある。この時の衣装の質問に関してはもはや無視された。

そんな姉が今年結婚する。去年初めて相手の人を連れてきたのだけど、姉と同様にとても落ち着いた人だった。途中で「お兄さん、そのコート、コロンボ刑事みたいですね」と言ったら「ああ、高かったよ」と流された。きっとうまくいく。